【コラム】ワッペンに用いる生地あれこれ
こんにちは。sacom worksです。
本日は、ワッペンのベースとなる生地について紹介しようと思います。
刺繍ワッペンは「生地に刺繍糸を縫い付けて作る」ものですが、作っている側とすると本来の土台は「芯」であり、土台の表皮にあたる部分が生地だと考えています。
生地は刺繍糸と同じ装飾物であり、必要に応じて熱接着シートやベルクロを縫い付けて、ワッペンとして構成されます。
生地素材については、sacom worksでは「ポリエステルツイル」「コットンツイル」「(ポリエステル)エンブクロス」「その他の生地」の4つのカテゴリーに分けて使用しています。
sacom worksでの使用順位としては「ポリエステルツイル」が最優先で、色がなければコットンツイル、指定があったり図案の構造や雰囲気で「エンブクロスが似合いそう」と思った場合には、エンブクロスをご提案させていただいています。
そもそも、それぞれの生地にどのような特徴があるのでしょうか?
【ポリエステルツイル(サージ)】
平滑な生地で、刺繍との相性が良い素材です。
サージは学ランに用いられている素材と言えばわかりやすいと思います。
ちなみにツイルとは「綾織り」のことで、斜めの織り目が特徴です。ポリエステルツイルの場合、カタカナの「ノ」の字に織りが入っています。
平滑な生地なので、刺繍糸と生地との干渉が少なく、模様がはっきり出るという特徴があります。基本的にポリエステルツイルで案内しています。
また、300度くらいで溶けるので、ワッペンの縁にヒートカットを使うことができます。
ヒートカットはワッペンの縁をヒートカッター(という名のハンダごて)で焼き切る方法です。sacom worksでは基本的にヒートカットで仕上げています。
【コットンツイル】
ポリエステルツイルで手に入らない色、たとえばTANカラーとして案内させていただいている素材などで使用している素材です。
ツイル(綾織り)なので斜めの織り目がありますが、ポリエステルとは「 逆 ノ」の字方向に織り目が走っているのが、見た目の特徴です。
ポリエステルツイルに比べ凹凸が多く、刺繍糸に干渉しがちです(生地の目に刺繍糸が沈んでしまう)。
このため、ポリエステルツイルに比べ模様が崩れがちになります。
模様崩れの対策はしますが、ポリエステルほどの精度は期待できません。とはいえ、目をこらさないと精度的な見分けは付かないレベルです。
余談ですが、sacom worksでは、ツイル系に関しては織り目の方向を統一して製作しています。生地には天地、表裏があるためです(生地の天地や表裏が統一されていないワッペンって、以外と多いのです)。
綿が入っているので、ヒートカットで切りづらい素材のため、一工夫必要です。
【エンブクロス(ポリエステルエンブクロス)】
おそらく「エンブロイダリー(刺繍)クロス(布)」の意味になるかと思います。マーク地などとも呼ばれ、刺繍ワッペンやユニフォームなどに用いられます。
刺繍のタタミ縫い(文字通り、畳の目のような面縫い)のような素材です。
たとえば面の全てを刺繍すると、刺繍の量が多くなるためコスト高となり、また、刺繍糸の引っ張りによる変形の影響を受けてしまいます。
すべてを刺繍しているような高級感が欲しい場合、エンブクロスを用いることで「全部を刺繍した風」に仕上げることができるわけです。
一方で、細かい刺繍製作には向かないという弱点もあります。
凹凸が大きいので、エンブクロスの目と刺繍糸の方向が同じになると、模様が干渉して崩れる現象が起きます。模様崩れの対策を行いますが、完璧に影響が消えるわけではなく、精密さにおいてはポリエステルツイルに分があります。
お客様からエンブクロス指定で製作をオーダーいただくことがありますが、細かい図案と判断した場合は、刺繍の仕上がり優先でポリエステルツイルを案内させていただく事もあります。
ちなみに、エンブクロスにも他の生地と同じく天地(縦横)がありますが、この素材に限っては、刺繍の模様崩れ対策を優先するため、本来の生地の縦横に関係なく使用しています。
ポリエステル製なので、ヒートカットができます。
【その他の生地】
sacom worksではサバイバルゲームや自衛隊関連のワッペンをオーダーいただく事が多いので、実物またはレプリカ(PX品)の迷彩生地を使うことがあります。
また、特殊な案件としては、那覇大綱挽の旗頭で使用するタスキにシャークスキンという生地を用いたり、「70年代のワッペンをイメージしたパッチを作りたい」というオーダーで帆布(キャンバス地)を用いたケースもあります。