【自衛隊・官公庁向け】刺繍パッチ(ワッペン)を発注するとき、仕様書をどう書くか
こんにちは。sacom worksです。
本日は刺さる人にしか刺さらないだろうけど、必要な方もいそうな「仕様書の描き方」をテーマにお届けします。
なお、一般のお客様や私費で製作するお客様は「大きさ」「図案(デジタル作画されたもの)」「枚数(通常最低10枚から)」の情報があればお見積り可能です。個人の発注でわざわざ仕様書を作る必要はないので、この記事は無視してください(笑)
仕様書とは
「仕様書」とは官公庁で物品や工事を発注するさいに作成される、決済や入札などに必要な情報が記された書面のことです。
工事などでは省庁ごとに「共通仕様書」があり、また、それぞれの工事に関する必要な情報を記した「特記仕様書」と図面(設計図書と言ったかな…)があります。
刺繍パッチを含む物品の発注においては、担当者が寸法や納期、引き渡し場所や枚数、裏面などの仕様、図面を付した1~2枚程度の仕様書の基本情報を作り、発注担当者から伺いを立てて発注(入札等)の流れになるかと思われますが、仕様書をどう書くかは意外と悩ましいものと思います。
仕様書のフォーマットは省庁ごとに定められているものと思われますが、公務員的には用語を正確に記さないといけないなどの事情もあるので、刺繍業者から見て「こう書いておけば概ね間違いないのでは」という話を、このページで紹介します。
物品名は「製法+パッチ(ワッペン)」でいかが?
何度か問い合わせをいただいたものに「パッチ」と「ワッペン」は何が違うのか?というものがあります。
先に書いておくと物は同じであり、英語で当て布に由来するパッチと、ドイツ語の紋章に由来するワッペンどちらの呼び名を使うかというだけのものです。詳細コラムはこちら。
一般的にはワッペンのほうが通じやすいけれども「パッチが正しい」とか、決済で「パッチとは何か?」などと問われるとめんどうなので、刺繍業者的には「パッチ(ワッペン)」と記載していれば概ね間違いないのではと思います。
また、「製法を明記する」のは意外と重要ではないかと思います。
ワッペン=布製というイメージが強いのではないかと思うのですが、同じ布製でも「刺繍」「織」「昇華プリント」などがあり、さらにゴム状の素材に着色した「PVCパッチ」や、特殊なものでは暗視装置に対応する「IRパッチ」なども流通しているので、どのような素材と製法で作りたいのか明確化する必要がありそうです。
ちなみにワッペンを作る業者といっても昇華プリントや織、PVCなんでもござれ状態ではないので、刺繍で作るパッチであれば「刺繍パッチ(ワッペン)」または「刺しゅうパッチ(ワッペン)」としておけば間違いなく、見積もりや入札のさいも専門業者へ発注がしやすく、また、業者側としても回答しやすいので混乱が少ないのではと思います。
ちなみに陸上自衛隊の右肩の部隊章は、服装細則にて「布製とする」とあるので、PVCは使えないということになりそうですね。
刺繍化できるデザインで
これは官公庁発注の案件に関わらないことなのですが、刺繍で作れないデザインで見積り依頼をされることがあります。
sacom worksは「作れないものに対しては見積もりは作れない」スタンスなので、できればデザインに入る前にデザインの作り方に目を通していただければと思います。
昨今の自衛隊では新しい部隊や艦艇の誕生が続いていますが、新たなロゴマークなどを公募したり決定する過程では、是非とも刺繍化できる図案でお願いできればと思う次第です。
なお、刺繍ではできなくても「昇華プリント」や「織」なら作れるということもあります。
全体の大きさを定めても、細かい寸法や仕様は業者に任せたほうがいい
見積もりには刺繍の工数を計算するため「大きさ」が必要ですが、細かい寸法や仕様はある程度業者にゆだねたほうが良いです。
というのも刺繍は業者によって技量や考え方がまちまちで、印刷物のような共通仕様がないためです。
たとえばパッチ(ワッペン)を切り出したあと、ほつれ止め処理のため「フチ」を作る必要がありますが、フチの処理は業者間では技量や個性、考え方が強く出ることろでもあります。
ミリタリー業界ではかつてから使われているロック加工(オーバーロック加工)が一般的ですが、使用するミシンがやや特殊なので、どこでも対応できるわけではありません。また、複雑な形に向かない、ヒートカットの台頭により糸の流通(糸色)が限られる、やや痛みが速いという弱点もあります。
sacom worksではヒートカットを中心に製作していますが、その仕様の中でも「二重ツイルヒートカット」はsacom works独自開発技術なので、これを使用書に記してしまうと他の業者は「?」となってしまいます。複数の見積もりをとったり、入札に至ることが大半だと思うので、このような細かい仕様を記すと色々弊害が出るかもしれません。
縁取りの幅3mmや、線の太さ1mmというのもsacom works独自基準であり、他の業者では事情が違うと思うので、加工法方法はある程度業者にゆだねるような書き方にしたほうが無難そうですね。
ベルクロは「面ファスナ」で
官公庁向け刺繍パッチ(ワッペン)は、裏面にベルクロを取り付ける場合がほとんどと思いますが、その場合は「ベルクロ」「マジックテープ」が商品名にあたるので、「面ファスナ」または「面ファスナー」と記し、フック側を示す「オス(おす)」も併記しておけば概ね間違いないかと思います。