「パッチ」「ワッペン」どっちなの?の疑問に刺繍店が答える
こんにちは。sacom worksです。
新型コロナから回復し、溜まっていた作業を勧めております。私はちょっとだるい程度で軽症でしたが、子供は高熱を出したりと大変そうでした。
さて本日は、お客様よりお問い合わせがあった「パッチ」「ワッペン」の違いについて、コラムとして紹介させていただきます。
なお、私の英語力は中1で止まっていますので言語について特段詳しいわけではなく、お客様や英語に詳しい友人から教えてもらった事などから、この記事を組み立てています。
「パッチ」「ワッペン」はいずれも同じものです。
sacom worksでは「刺繍パッチ・ワッペン製作」としていますが、この二つは全く同じものです。
この記載方法はお客様がわかりやすいように(探しやすいように)、sacom worksのサイトで独自に始めたものですが、最近はあちこちのサイトで使われています。
ちなみに
- パッチ(Patch)は「あて布」に由来する英語
- ワッペン(Wappen)は「紋章」を意味するドイツ語
とのことです。
日本国内においては広く「ワッペン」という呼称が使われており、米軍由来の物品が多いミリタリー業界やサバゲー業界では「パッチ」と呼ぶ傾向があるので、sacom worksでは、広くわかりやすいようその両方を表記しているというわけです。
なので裏のベルクロの有無や処理の違いで呼称を変えているわけでもないのです。
ちなみ自衛官の方の呼び方は「パッチ」と「ワッペン」が半々くらいで、航空関係やサバゲー好きの方はパッチと呼んでいる感触です。日本語が上手な元海兵隊員の友人はパッチ(「パーッチ」という感じで発音)と呼んでいました。
なお、趣味として人気のある「パッチワーク」との混同を避けるため、また、後に紹介する構造上の違いも考慮して、sacom worksでは「刺繍パッチ・ワッペン」と表記し、英語圏の方には「エンブロイダリーパッチ(Embroidery Patches)」と紹介するようにしています。
ちなみにsacom worksの新マークで「エンジニアリング(工学)」としているのは、もともと中の人が土木エンジニア出身で、その中で得た技術の応用で、現在の高精度刺繍技術を確立したためです。
モチーフは近所の大好きな川(安里川)に住むオオメジロザメで、年に数回、テレビ取材などのガイドをさせていただいております。SWは頭文字と釣りのソルトウォーターと掛けています。
刺繍:エンブロイダリー(Embroidery)
ちなみに刺繍店を意味する「エンブ」も、おそらく刺繍のエンブロイダリーに由来するのではないかと思われます。エンブレムの略だと、他印刷物等にも対応せざるを得なくなりそうですからね。
刺繍をしたような生地に「エンブクロス」という素材がありますが、これもおそらく刺繍風の布(エンブロイダリー・クロス)に由来するのではないかと思われます。
エンブクロスを使った日章旗(日の丸)パッチ。刺繍製品で正円を確保するのは非常に難しい。
アップリケとは?
なお、ラテン語に由来とする「アップリケ」という呼称もあります。
もしかするとアップリケと呼んでも間違いないのかもしれませんが、一部または全部を刺繍し再現するパッチ・ワッペンと違い、多種類の布(縁の処理がしやすいフェルトなどの不織布)を張り付けて一部を縫い合わせる手法で作られることや、家庭的(小さなお子様向け)なイメージが強くなってしまうので、sacom worksではこの呼称を使用していません。
マジックテープとベルクロの話
「パッチ」「ワッペン」の呼び名は裏面処理に使うベルクロの呼び方と似ていて、日本国内ではマジックテープと呼ぶことが多いですが、英語圏ではベルクロと呼ぶことが一般的なようで、元海兵隊員の友人にマジックテープと言ったら「何それ!魔法のテープがあるの?」と笑われたことがあります。
ちなみ日本国内ではマジックテープもベルクロも商品名なので「面ファスナー(ファスナ)」が共通した名称となるようです。陸上自衛隊服装細則にも「面ファスナ」という名称が使われています。
製法や素材による違い
パッチ・ワッペンに関しては色々な製法があり、着物の生地のように糸を織り込む「織り」で作られたものや、昇華プリントで作るものに別途ミシンで縁取りを施して処理するもの、PVCというゴムのような素材(ポリ塩化ビニール)に着色したものもあります。
昇華プリントはエンブクロスに転写することで刺繍しているように見え、また、近年はカメラ付き刺繍機などの登場で、刺繍と合わせることもできるようになっています。
また、特殊な用途なものにはレーザーカットした生地に赤外線反射シートを挟み込んだ軍用のIRパッチもあります。
それぞれ「IRパッチ」「PVCパッチ」だったり「織りワッペン」「昇華ワッペン」表記だったりするのが面白いところですね。刺繍専門のsacom worksではそれらは作れないので、これらを作る時の検索のさいの参考にされてみてください。
そういえば昔のサバゲーでも、M16A1(エムイチロクエーツー)みたいな呼び方してたような・・・言葉って面白いです。
パッチとワッペン、”仕様書”でどう表記すれば?
今回の記事を書くに至った理由はお客様からのお電話だったのですが、おそらくお話の感じから、官公庁関連の方ではないかと思います。たとえば官公庁での発注(調達)では、見積もりや入札、契約に先立ち「仕様書」を作る必要がありますが、「パッチ?ワッペン??表記はどうするべきか?」で混乱があるのかもしれません。
この場合、「刺繍パッチ(ワッペン)」と記載すれば入札対象者に伝わるものと思いますが、下記のとおり注意が必要です。
- (1)刺繍に限らず「織」や「プリント(昇華プリントなど)」でも良い場合は単に「パッチ(ワッペン)」でも良いと思いますが、仕上がりや価格(単価)にも影響します。※sacom worksでは織、プリントには対応できません。
- (2)刺繍を指定する場合「刺繍パッチ(ワッペン)」と表記することで明確化されるものの、指定の図案が刺繍で作れるよう考慮された図案となっているか。
- (3)裏面処理にベルクロを指定する場合「面ファスナ(おす)」と表記すると安心。
特に(2)については、入札の案内や見積もり依頼などを出したものの「刺繍できない」と判断されることもあるので、図案を決める段階で刺繍ができるものとしてデザインされていることが重要です。
また、多少の図案変更や大きさなどの仕様変更により対処できる場合もあるので、刺繍パッチ(ワッペン)で発注されるさいは、仕様書の特記事項として「技術的に難しい箇所がある場合あらかじめ協議し、代替案を提案すること」などの条項を入れておくとスムーズかもしれません。
刺繍化できるデザインに関しての詳細はリンクをご参照ください。