【デザイン】刺繍パッチ・ワッペンの図案は、偏りなく配置したほうが良い理由
こんにちは。sacom worksです。
今回は引き続き、刺繍パッチのデザインに関してのお話です。
糸と生地を用いて作る刺繍製品は、印刷物よりも土木建築に近い要素があります。
刺繍製品も、材料の組み合わせにより様々な力が加わります。
そして、その力をいかにして抑え、逃がし、支えるかを考えなくてはなりません。
刺繍には印刷物やイメージ画像にはない「糸の流れ」という要素がありますが、美術的観点だけではなく、力の影響まで考えなくてはいけないので、やはり土木建築に近い要素があると思うのです。
また、刺繍のテクニックで力の影響を軽減することはできますが、完全に排除することはできません。
刺繍に加わる様々な力の影響を軽減するためには、模様をまんべんなく配置する必要があるのです。
【最も難しい図案…それは「日の丸」】
細かい刺繍製品を見ると「すごい!精度が高い」と感じてしまうものですが、実は刺繍のルールを踏まえたうえで作られた細かく込み合った図案よりも、刺繍量の少ないシンプルな図案のほうが難しいものです。
シンプルかつ難しい刺繍の代表格と言えば、我が国日本の国旗である日章旗(日の丸)です。
注:日章旗と呼ばれる朝日状のマークの正式名称は「旭日旗」で、よく知られる16条旭日旗は海上自衛隊の護衛艦旗としても現在も使われています。
正円を作るのこそ非常に難しく、糸の引っ張りや圧縮でどちらかの方向に変形します。
また、変形の影響で丸の周辺にシワが入ります。刺繍機を使った刺繍においてはこの変形を完全に防ぐことは、物理的に無理だと考えています(だいぶ軽減した製品を作っていますが、製造方法は企業秘密です)。
日の丸に限らず、シンプルな模様を縫うというのは意外と難しいもので、変形との闘いとなります。
【ひずみやすいデザインと対処法の事例】
この図のように、円の片側に模様が集中しているような図案は、刺繍糸の引っ張りなどによる変形が起こることがあります。図の水色の部分は本来の正円のラインで、橙色がひずんだあとの形です。
ちょっとした事でありますし、刺繍製品の誤差の範囲と言えばそれまでなのですが、気になると言えばやはり気になります。
これはひずむ誤差を考えて刺繍したとしても、時間の経過とともにひずみが生じてしまうので、あまり良い方法とはいません。
やはり下図のように、模様をまんべんなく配置する方法や、正円や直線を用いないデザインにするという方法が考えられます。