刺繍パッチ屋が教える、刺繍店の選び方。価格やクオリティー、ジャンルや刺繍店ごとの得意不得意、個性など。
こんにちは。sacom worksです。
本日はコラムとして、刺繍パッチ屋として思う、刺繍店の選び方について考察、紹介したいと思います。
もちろん、sacom worksを選んでいただけますと嬉しいのですが、一言に刺繍店と言っても、個性や得意不得意があるのです。
【増えましたね刺繍店・・・】
私が刺繍ワッペン製作を始めた10年ほど前は、手刺繍、コンピュータ刺繍に限らず「刺繍は職人の世界」という風潮がありました。
また、コンピュータ刺繍はウン百万の多頭機(1度に何枚も縫える)と、びっくりするくらい高いソフトを使うのが業界の普通・・・という時代でした。
私は刺繍機能付きミシンと刺繍業者からは「簡易刺繍製作ソフト」などと呼ばれていたソフトを用いて、刺繍店ごっこを始めたのですが、「あれ、この仕組みでも製品は作れのでは?」と研究を続け、現在に至っています。
この成果に目を付けたミシンメーカーから招待され、講師を務めるなどもしましたが、結果的に刺繍店が乱立する事に・・・(後悔)
最近の刺繍パッチ業界の動向を分析していると、「うちの刺繍パッチのルールブック見てデザインしてるな・・・」というものも増えてますね・・・色々複雑な気持ちもあります。
このルールブックに基づけば、刺繍パッチを作ってる刺繍店ならどこでも作れますよ。作れるルールを書いておりますので。 (ちなみに、基準外でも「できるかも?」という刺繍があります。これはまた別の機会に紹介したいと思います。)
業者が乱立する昨今、どうやって刺繍業者を選べばよいのか。
もちろんsacom worksにご依頼いただければ嬉しいですが、得意不得意もありますし、気に入った業者に依頼するのが一番かなと思います。
【業種で選ぶ刺繍店】
刺繍店と一言でまとめても、様々な業種があります。
たとえば
・ネーム入れ専門の刺繍業者。
・衣類やキャップ等に刺繍を入れることに特化した業者。
・ワッペン専門の業者(うちです)。
・なんでも手広くやる業者。
という具合です。
たとえばsacom worksの場合は、直接刺繍はリスキーと考えているので、ワッペン専門です。縫製前のパーツなどへの刺繍も行えます。
逆に、ワッペンの縁を作ることが難しいので、ネーム入れや衣類、キャップなどへのロゴ刺繍を専門としている業者もいます。
ネーム入れ専門の業者は、主に制服店と兼任している場合が多く、年度末や衣替え前に忙しくなる傾向があります。刺繍データや外字(通常使われていない文字)を外注しており、流れ作業に特化している業者さんも多いです。
【発注数量で選ぶ刺繍店】
業者(工場の規模)によっても様々です。
・多頭機や単頭刺繍機の数を揃え、大量生産を主軸にした業者。
・機材や人員は少な目で、小ロットに対応する業者(うちです)。
・単品やごく少量(数枚)の生産に向く、昔ながらの手振り、横振り刺繍の職人。
数量が多くなれば、一般的にコストが下がります。
大量生産すればコストは下がりますが、大量生産を行う業者では、小ロットは受け付けないというケースも多いです。
以前は30枚以上から受注しますという業者が多く、10枚ほどの小ロットに対応する業者は少なかったです。小ロットを受け付けても、びっくりするくらい高いとか・・・(設備等のコストが関係してたのだと分析してます)
ちなみにsacom worksは10枚から、または単品を受付しています(忙しさにより変動します)。
【ジャンルで選ぶ刺繍店】
得意とするジャンルも重要な項目です。
・なんでも手広くやる刺繍店
・学校や企業向けをメインとしているところ
・スポーツが得意なところ(スポーツ店が兼任している場合が多い)
・ミリタリー系に特化しているところ(自衛隊、米軍、サバイバルゲームなど。うちです)
という分け方もできます。
たとえば、sacom worksはミリタリーものがメインで、自身もサバゲーマーだったりミリタリーおたくですので、多少の軍事用語が通用したり、サバゲーの装備や、自衛隊で使う前提でワッペンを作ることは得意です。
よくあるのは、「M4をここに配置してください」「マルチカムにあわせた配色で」などというケースです。意味不明な用語ですよね(笑)
ミリタリーの話を読み取って製作するのが、私の仕事だと思っています。(※縫製担当の妻は詳しくないです。ストックやハンドガードが木のやつは全部AKに見えるそうです・笑)
もちろん、他のジャンルの刺繍ワッペンを作ることもできますよ。
【価格で選ぶ刺繍店】
ネーム刺繍などのように相場が概ね決まっている刺繍もあれば、刺繍パッチのように相場がわかりにくい刺繍製品もあります。
概ね下記のパターンがあります。
・見積もりが原則で、価格を公表していない業者。
・参考価格を表示したうえで、見積もりを作成する業者(うちです)
・サイズ等で固定価格としている業者。
かつては1針いくらという計算でしたが、「そもそも何針あるのか査定しずらい」という問題も抱えていました。見積もりを作るために試作データを作らなければならないのです。
また、私が刺繍店を始めた当初は「見積もり」が基本で、価格を掲載している業者は殆どありませんでした。
お客様にできるだけわかりやすいようにと、面積による計算とその手法、参考価格を掲載するようになりました。今では参考価格を表示している業者が主力になっています。
近年は、サイズ(面積)で価格を固定している業者も増えました。
この方式は非常にシンプルでわかりやすいのですが、実は適正価格なのか、クオリティー面でどうなのか、というのは焦点になるかもしれないという印象を持っています。
たとえば刺繍する箇所が少なく、さほど手がかからない図案でも、表示価格どおりの請求となってしまう恐れもあります。他の業者に見積もりを取れば、もっと安くできたかもしれませんね。
逆に凝った図案であれば、より利益を得る(表示価格に収める)ために、クオリティーを落としてしまう可能性だってあります。
sacom worksが参考価格を表示しているうえで、見積もりとしているのも、できるだけ適正価格で、お客様には安心・納得のうえで発注いただきたいと思うためです。
こうした問題を解消するには、複数の業者に見積もりを出し、比較検討を行うことが一番かなと思います。
なお、見積もり作業は単に価格の査定を行うのではなく、刺繍の可否や解決策、適切な材料の組み合わせ、美しく仕上げるための縫い方を「設計」したうえで価格を算出しています。
【納期で選ぶ刺繍店】
誰でも早くほしいと思うのは当然のことですが、印刷業者などでも、急ぎのお仕事は割増というのが一般的です。すぐに欲しいという方は「即納」などで検索されるとよいと思います。
ネーム刺繍のような流れ作業の業者の場合は、淡々と作業をこなしている場合が多いのですが、絵柄を作るワッペン刺繍などの場合は、いただいた原画をもとに最適な縫い方を検討しつつ、刺繍データを作りこみますので、時間がかかる場合も多いです。(私も正直作業が遅いので、余裕を持った発注をお願いいたします)
【クオリティーで選ぶ刺繍店】
一言でクオリティーと言っても判断は難しいですが、こればかりは写真や現物を見ていただいたうえで判断するのが一番かと思います。
刺繍店の目線でチェックポイントを考えてみると
・不要な糸が切られて処理されているか(耐久性向上のため、あえてつないでいる刺繍製品もあります)。
・フチの処理の美しさ
・目の細かさ(粗さ)
・模様のズレの有無
・糸のつり、シワの多さ
などがあります。
不要な糸(渡り糸と言います)の切断については、あえて不要な糸を切らずに流れるように刺繍している製品( アメリカ製のワッペンに多い)もあります。
合理性よりも職人気質を優先する日本においては、不要な糸は綺麗に切断処理されているのが一般的です。
目の細かさ(粗さ)については、一部マニアや業者からは「蜜なものほど良い」などと言われることもあります。
しかしながら、作る側からすると、膨らんでいるため洗濯などで傷みやすいリスクがあったり、刺繍箇所の周辺のシワなどにつながる場合もあります。
また、色を多く使い、細い線を多用し、細かく美しい刺繍製品もあるのですが、細い線は模様がずれやすく、果たして色数が多ければ綺麗なのか?という側面も持ち合わせています。
こうした話はかなり細かい話なのかもしれませんが、そのような部分も見ていただき、刺繍店の技術やクセなどを感じ取っていただけると、作る側としても嬉しく感じます。